CRMに入力されない原因と改善手順|営業の記録を次の行動へつなぐ

紙の記録カードを入れた箱が帯でつながり、確認用の虫眼鏡と別に置かれた保留カードが並ぶ生成イメージ
生成画像によるイメージです。生成AIでCRMの記録を確認して次の行動へつなぐ考え方を表しています。実際のお客様の記録や製品画面ではありません。

この記事の結論

CRMに営業の記録が入力されないときは、入力を求める前に、記録が次の行動に使われる形になっているかを見直します。記録が生まれる場面ごとに止まる点を観察し、理由を人ではなく仕組みの言葉で書きます。残す項目は、相手・案件・状態・次の行動・期限・担当のように、目的と使う人を書けるものに絞り、分からないことは空欄にせず「未確認」と書いて推測と分けます。新しい連絡は、既存の案件への追加・重複・別の案件のどれかを人が確かめてから記録し、保留・辞退・追客の希望なし・次の日付が未定にも書き方を決めて、次の行動の欄を空欄にしません。週に一度、記録を読む場を決めて、読んだ結果を担当者の次の行動として返し、読まれない項目は減らします。入力の割合は記録が必要な出来事を分母に数え、案件の完了とは分けます。入力の負荷と営業の進み方を両方から見て、2週間の小さな試行で、試す前に決めた条件に沿って続ける・直す・戻すを判断し、少ない件数で原因を決めつけません。

この記事で確認できること

  • 「CRMに入力されない」を、記録が生まれる場面ごとに観察する方法と、相手・案件・状態・次の行動・期限・担当を目的と使う人つきで残す最小の項目、任意の項目と「未確認」の書き方
  • 既存の案件への追加・重複の問い合わせ・別の案件の区別、保留・辞退・追客の希望なし・次の日付が未定の書き方、担当の交代、記録を読む場と現場への返し方、例外(個人のお客様・共有のメール・同じ名字・異動・複数の商談・退職・ツールの停止)の扱い
  • 出来事を分母にした入力の割合の数え方と案件の完了の区別、架空の6案件の台帳での計算、入力の負荷と営業の進み方の見方、2週間の小さな試行と判断の条件・戻し方、登録不要のCRM運用20項目点検表と空欄の修正票

結論:入力を求める前に、記録が次の行動に使われる形にする

顧客管理の仕組み(CRM)を入れたのに、営業の担当者が商談や電話の記録を入れてくれない、入れても日がたってからまとめて入る、という悩みがあります。このとき、「入力は必須です」と何度も伝えたり、入力の欄を増やして抜けを防ごうとしたりすると、担当者の手間が増える一方で、記録はかえって後回しになるおそれがあります。入力されない理由が、担当者のやる気ではなく、記録しても自分の仕事に返ってこない作りにあることも考えられるためです。

この記事では、営業の記録が生まれる場面を観察し、残す項目を絞り、記録を読む場を決めて現場へ返し、小さく試して判断する手順を、登録なしで使える20項目の点検表と空欄の修正票にまとめます。結論を先にまとめると、次の5つです。

  1. 「入力されない」を一つの問題として扱わず、記録が生まれる場面ごとに、どこで止まっているかを観察する
  2. 残す項目を、次の行動・期限・担当など、誰かが実際に使うものに絞り、項目ごとに目的と使う人を書く。分からないことは空欄にせず「未確認」と書けるようにする
  3. 既存の案件への追加か、重複の問い合わせか、別の案件かを、人が確かめてから記録する。保留・辞退・追客の希望なし・次の日付が未定も、それぞれ書き方を決める
  4. 記録を読む場(週の打ち合わせなど)を決め、読んだ結果を担当者の次の行動として返す。読まれない項目は減らす
  5. 入力の割合は分母を決めて数え、案件が終わったかどうかとは別に見る。入力の負荷と営業の進み方を両方から見て、2週間の小さな試行で続けるか戻すかを決める

この記事が向いている方

CRMや顧客の一覧の表計算のシートを使っていて、営業の記録が入らない、または入っても次の行動に使われていないと感じている、小さな会社の営業の責任者や経営者、営業と事務を兼ねている担当者を主な読者として考えています。特定のCRMの製品を前提にせず、表計算のシートでも試せる手順にしています。

この記事で扱わないこと

CRMの製品の選び方、料金、設定の画面の操作、ほかの仕組みとの連携の手順は扱いません。問い合わせを受け取った直後の返信漏れや、受信箱の担当の決め方は問い合わせの返信漏れを防ぐ管理手順で、資料のダウンロードから相談までの導線はホワイトペーパーが商談につながらないときの点検で扱っています。この記事は、営業の担当者がCRMに記録を作り、更新し、その記録が次の行動に使われるまでの運用に絞ります。

先にお伝えしておくこと

この記事の手順、項目の絞り方、状態の分け方、点検表と修正票は、Akatsuki編集部の実務の提案です。特定の会社で効果を測った結果ではなく、入力の割合や商談の件数が上がることを約束するものではありません。CRMの入力の割合の一般的な水準や、業種ごとの目安は扱いません。そうした数字を、この記事では確かめていないためです。

提供元の公式の説明で確かめた内容には【公式情報】、編集部の考えや提案には【編集部の提案】と書いています。本文の「出典1」などの番号は、記事の下の一次情報の番号に対応しています。記事に出てくる会社・担当者・案件・日時・件数は、説明のための架空の例です。

記録が生まれる場面を、先に観察する

「CRMに入力されない」という言葉の中には、性質の違う止まり方が混ざっています。項目や決まりを変える前に、担当者が記録を作るはずの場面を並べ、それぞれの場面で何が起きているかを見ます。

営業の記録が生まれる場面と、止まりやすい点(編集部の提案)
場面記録すること止まりやすい点
問い合わせを受けた相手・用件・最初の担当受信箱やメールに残り、CRMへ移す人が決まっていない
初めての商談・訪問相手の状況・次の行動・期限移動の合間で入力の時間がない。何を書けばよいか分からない
電話・オンラインの打ち合わせ決まったこと・次の行動短い電話は記録するほどでもないと判断される
見積もり・提案の送付送った日・回答の期限送付の控えはメールにあり、CRMには書かれない
先方からの返事返事の内容・状態の変更状態の名前が合わず、どれにすればよいか迷う
担当の交代引き継いだ日・新しい担当前の担当のメモが個人の手元に残る

一人の担当者の一日を、記録の目線で追う

【編集部の提案】観察は、聞き取りより先に、実際の一日の流れを追うところから始めます。営業の責任者が、担当者一人の一日の予定表と、その日に作られた記録を並べ、「この打ち合わせの後に、記録が作られたか」「作られたのは何時か」「書かれたのはどの欄か」を書き出します。担当者を評価するためではなく、記録が止まる場面を見つけるための作業であることを、始める前に本人に伝えます。

書き出すと、「移動の多い日は夕方にまとめて入れている」「電話の記録は入れていない」「見積もりを送った記録はメールにしかない」のように、止まる場面に偏りが見えてきます。偏りが分かると、全部の場面に同じ決まりをかけずに、止まっている場面だけを直せます。

担当者に聞くこと

【編集部の提案】一日の流れを追った後に、担当者に次の3つを聞きます。

  • 記録を入れるとき、どの欄で手が止まるか
  • 入れた記録を、後で自分で見返すことがあるか。あるなら、どの欄を見るか
  • ほかの人の記録を見て、困ったことがあるか

2つ目の答えが「見返さない」であれば、その記録は担当者自身の仕事に返ってきていません。入力の決まりより先に、記録が誰の何に使われるかを見直す必要があります。

入力されない理由を、責める言葉で書かない

観察の結果は、「担当者が入力しない」ではなく、「移動の後に入力する時間と場所がない」「状態の名前が実際の商談の進み方と合わない」のように、仕組みの側の言葉で書きます。人を責める言葉で書くと、次の打ち合わせで本当の理由が出にくくなるためです。

最小の項目:目的と使う人を1行ずつ書く

記録の項目は、多いほど抜けを防げるように見えますが、項目が増えるほど一件の入力に時間がかかり、入力そのものが後回しになります。まず、残す項目を最小にし、項目ごとに「何のために残すか」と「誰が使うか」を書きます。

営業の記録の最小の項目として、相手、案件、状態、次の行動、期限、担当の6つを中央に置き、それぞれの項目の目的と使う人を横に書き、任意の項目と未確認の欄を別の枠に分けた説明図
図:最小の項目と、目的・使う人(Akatsuki編集部作成)図を拡大して見る

図の内容:中央の枠に、最小の項目として「相手」「案件」「状態」「次の行動」「期限」「担当」の6つが縦に並んでいます。それぞれの右に、その項目の目的(例えば、次の行動は「次に誰が何をするかを分かるようにする」)と、使う人(担当者本人、営業の責任者、代わりの担当)が書かれています。右下の別の枠には任意の項目として「予算の目安」「競合の有無」「決める人」が置かれ、分からないときは空欄にせず「未確認」と書くことが示されています。下の注記に、目的と使う人を書けない項目は最小の項目に入れないこと、項目を足すときは減らす項目も一緒に決めることが書かれています。

最小の項目の例

【編集部の提案】次の6つを、最小の項目の例として挙げます。会社によって名前は変わってかまいませんが、目的と使う人は必ず書きます。

最小の項目と、目的・使う人(編集部の提案)
項目書くこと目的使う人
相手会社名と担当の方の名前、または個人のお客様であること同じ相手の記録をまとめる担当者・代わりの担当
案件何の用件か(1つの用件に1つの案件)同じ会社の別の用件と分ける担当者・営業の責任者
状態決めた言葉のどれか1つ止まっている案件を見つける営業の責任者
次の行動次に誰が何をするか次の連絡を忘れない担当者・代わりの担当
期限次の行動をいつまでにするか(日付)遅れに気づく担当者・営業の責任者
担当1人の名前誰に聞けばよいか分かる全員

この6つは、記録を作った人以外が見たときに、「この案件は今どこにあり、次に誰が何をするのか」が分かるための最小の組み合わせです。商談の細かな内容は、自由に書ける欄に短く書けば足ります。

任意の項目は、使う場面が決まってから足す

【編集部の提案】予算の目安、競合の有無、決める人、導入の時期などは、分かれば役に立つ情報です。ただ、初めての商談で全部が分かるとは限らず、これらを必須にすると、担当者は推測で埋めるか、入力を後回しにするかのどちらかになります。任意の項目は「分かったら書く」とし、営業の責任者がどの判断に使うかを決めてから足します。使い道を書けない項目は足しません。項目を一つ足すときは、使われていない項目を一つ減らせないかも一緒に考えます。

分からないことは「未確認」と書く

【編集部の提案】任意の項目が空欄のとき、それが「聞いていない」のか「聞いたが相手も決めていない」のか「入力を忘れた」のかは、後から見ても分かりません。そこで、分からないことは空欄のままにせず、「未確認」と書けるようにします。「未確認」は、入力の漏れではなく、まだ確かめていないという事実の記録です。確かめた内容と、担当者の推測は、別の欄か別の書き方にします。推測を確かめた事実と同じ欄に書くと、引き継いだ人がそれを事実として扱ってしまうためです。

事実・推測・未確認の書き分けの例(架空、編集部の提案)
書き方例引き継いだ人が受け取ること
確かめた事実決める人:先方の部長(10月の商談で本人から聞いた)誰に確かめたかが分かり、そのまま使える
担当者の推測決める人(推測):部長と思われる。理由は打ち合わせに同席したため確かめる必要があると分かる
未確認決める人:未確認まだ聞いていないと分かり、次の機会に尋ねる
空欄決める人:(何も書いていない)聞いていないのか、忘れたのかが分からない

この表の最後の行のような空欄を減らすことが、「未確認」の書き方を決める目的です。推測の欄には、そう考えた理由を短く添えます。理由があれば、後で事実と違っていたときに、どこで読み違えたかを振り返れます。

書かない情報と、見られる人を決める

【編集部の提案】商談の記録には、相手の個人的な事情など、営業の判断に要らない情報を書きません。誰がどの記録を見られるか、記録をどこに、いつまで残すかは、会社の決まりに沿う必要があります。権限の設定と保存の扱いは、社内で情報の管理を受け持つ責任者に確かめてから決めてください。この記事では、その判断が法令に合っているかは扱いません。

また、CRMの記録をアクセス解析などの計測の仕組みへ送る使い方は、この記事では提案しません。計測では、問い合わせの件数などを個人が分からない形で見ます。計測の件数と受付の台帳の照合は、GA4の問い合わせコンバージョンが受付件数と合わないときに確かめる順番で扱っています。

同じ相手か、別の案件か:人が確かめてから記録する

記録が増えてくると、「この問い合わせは、すでにある案件の続きか、別の新しい案件か」で迷う場面が出てきます。ここを担当者ごとの判断に任せると、同じ用件が2つの案件に分かれたり、別の用件が1つの案件にまとめられたりします。

ツールの重複の仕組みは、手がかりの一つ

【公式情報】例えばHubSpotのヘルプでは、連絡先はメールアドレス、会社はドメイン(会社のウェブサイトのアドレス)を手がかりに重複の扱いが説明されており、記録の作られ方によって扱いが異なる場合があることも書かれています(出典1)。

【編集部の提案】ツールの重複の仕組みは、同じ相手を見つける手がかりとして役立ちます。ただ、仕組みが同じ相手とみなすことと、営業の案件として同じ用件であることは別です。同じ会社から別の部署が別の用件で問い合わせてきた場合、相手の会社は同じでも、案件は分けるのが自然です。ツールの仕組みで相手がまとめられたかを見た後に、案件として同じかどうかは、人が確かめて決めます。利用しているツールで重複がどう扱われるかは、提供元の最新の案内で確かめてください。

3つの区分で記録する

【編集部の提案】新しい連絡が来たときは、次の3つのどれかを決めてから記録します。

新しい連絡の3つの区分(編集部の提案)
区分条件記録の仕方
既存の案件への追加同じ相手の、進行中の用件の続き既存の案件の記録に、日付と内容を足す
重複の問い合わせ同じ相手(または同じ会社の別の人)が、同じ用件で別の窓口から連絡してきた先にある案件にまとめ、まとめたことと元の連絡の日時を書く
別の案件同じ相手や会社でも、用件が違う新しい案件を作り、同じ会社の別の案件があることを書く

迷った場合は「区分の確認待ち」とし、営業の責任者が決めます。確認待ちのまま放っておかないよう、確認する期限も書きます。

まとめるときは、消さずに残す

重複の問い合わせを先の案件にまとめるときは、後から届いた連絡の記録を消さず、「どの案件にまとめたか」が分かる形で残します。消してしまうと、相手が「前にも問い合わせた」と言ったときに、いつ、どの窓口から連絡があったかを確かめられなくなります。

止まった案件の書き方:保留・辞退・追客の希望なし・次の日付が未定

入力が止まりやすいのは、案件が前に進んでいないときです。進んでいない案件には、状態の名前が合わず、どれを選べばよいか迷うため、記録が後回しになります。止まり方ごとに書き方を決めておきます。

ツールの段階と、営業の状態を分けて考える

【公式情報】HubSpotのヘルプでは、マーケティング・営業の進み方の段階を表すライフサイクルステージと、その一部の段階で営業の対応をより細かく示すリードステータスを、別の項目として説明しています(出典2)。また、Salesforceの日本語の解説ページでは、リード管理の中で、見込み客の獲得・育成・選別を分けて説明しています(出典3)。

【編集部の提案】2つの項目は別々に用意されていますが、互いに関係のない工程を表すものではありません。ツールの段階の名前は、その製品での定義です。自社の営業の「保留」や「辞退」が、ツールのどの段階や項目に当たるかは、製品の定義を見て社内で対応の表を作ります。この記事で使う状態の言葉は、編集部が決めた運用の区分で、特定のツールの定義と同じものではありません。

営業の案件の状態として、進行中、保留、辞退、追客の希望なし、次の日付が未定の5つを並べ、それぞれに必要な記録(理由、次に確かめる日、連絡を止めた日時)を示した説明図
図:案件の状態と、それぞれに書くこと(Akatsuki編集部作成)図を拡大して見る

図の内容:左に「進行中」の枠があり、次の行動と期限が必ず書かれていることが示されています。右に、止まった案件の4つの状態が並びます。「保留」には理由と次に確かめる日、「辞退」には辞退の連絡を受けた日時と連絡を止めたこと、「追客の希望なし」には本人の希望を受けた日時と営業の連絡をしないこと、「次の日付が未定」には次の日付が決まらない理由と、日付を確かめる日が書かれています。下の注記に、どの状態でも空欄の次の行動を残さないこと、状態を変えた人と日時を記録すること、状態の名前は編集部の運用の区分で特定のツールの定義ではないことが書かれています。

4つの止まり方と、書くこと

止まった案件の書き方(編集部の提案)
状態どんなときか書くこと次の行動の欄
保留相手の社内の事情などで、今は進められない理由と、次に確かめる日「〇月〇日に状況を確かめる」
辞退相手から、今回は見送ると返事があった返事を受けた日時と内容「連絡しない」と書く
追客の希望なし相手から、営業の連絡は要らないと伝えられた希望を受けた日時と、連絡を止めたこと「連絡しない」と書く
次の日付が未定相手が次の打ち合わせの日を決められない決まらない理由と、日付を確かめる日「〇月〇日に日程を尋ねる」

どの状態でも、次の行動の欄を空欄にしません。止まった案件こそ、次の行動が書かれていないと、そのまま誰も触らなくなるためです。

「保留」と「次の日付が未定」を分ける

保留は、案件そのものを今は進められない状態です。次の日付が未定は、案件は進めたいが、次の打ち合わせの日が決まらない状態です。2つを同じ状態にまとめると、確かめるときに聞く内容が変わってしまいます。保留なら「社内の事情は変わりましたか」、日付が未定なら「次の打ち合わせはいつがよいですか」と聞くことになるためです。

辞退と追客の希望なしは、連絡を止める

【編集部の提案】辞退と追客の希望なしの案件には、営業の連絡をしません。止めた日時と理由を状態の欄に書き、担当者が代わっても同じ相手に連絡が重ならないようにします。本人の希望がないのに、メールマガジンの配信の一覧へ加えることもしません。配信の一覧の管理や、配信が届かないときの点検はメルマガが届かないときの原因と点検手順で扱っています。

担当が代わるときの記録

担当者の交代は、記録の抜けが目立つ場面です。前の担当が覚えていたことが記録にないと、引き継いだ担当は、相手に同じことを聞き直すことになります。

引き継ぎの日に確かめること

【編集部の提案】担当を替えるときは、交代の日を決め、その日に前の担当と新しい担当が一緒に案件の一覧を見ます。確かめるのは次の4つです。

  • 進行中の案件ごとに、次の行動と期限が書いてあるか
  • 保留と次の日付が未定の案件に、確かめる日が書いてあるか
  • 辞退と追客の希望なしの案件が、状態の欄で分かるか
  • 前の担当の個人のメモや手帳にだけある情報がないか

4つ目で見つかった情報は、事実と推測を分けて記録に移します。新しい担当が引き継いだことを確かめたら、担当の欄を書き換え、交代の日と前の担当の名前を記録に残します。

相手への連絡は、新しい担当から一度だけ

担当が代わったことを相手に伝える連絡は、新しい担当から一度だけにします。前の担当と新しい担当の両方から連絡が届くと、相手はどちらに返事をすればよいか迷います。ただし、辞退と追客の希望なしの案件には、交代の連絡もしません。

引き継いだ後の最初の週

【編集部の提案】引き継いだ後の最初の週の打ち合わせでは、引き継いだ案件だけを並べ、次の行動と期限が新しい担当の予定に入っているかを確かめます。引き継ぎの日に書き写した次の行動が、新しい担当の予定表に入っていないと、記録の上では進んでいるように見えても、実際には誰も動いていない状態になります。

引き継いだ記録に「未確認」が残っている項目は、そのために相手へ確認の連絡を増やすことはしません。次に相手と話す予定の場面で確かめ、確かめた日を記録に書きます。前の担当が社内にいる場合は、引き継いだ案件について質問できる期間を決めておき、その期間が過ぎたら、分からないことは「未確認」のままにして、相手との次の機会に確かめます。

記録を読む場を決め、現場に返す

記録が入らない理由として見落としやすいものの一つが、入れた記録が誰にも読まれていないことです。読まれない記録は、担当者にとって報告のための作業になり、後回しにされます。記録を読む場を決め、読んだ結果を担当者の次の行動として返します。

担当者が記録を入れ、週の打ち合わせで営業の責任者と一緒に読み、期限切れや次の行動の空欄を見つけて担当者に返し、担当者が次の行動を進めて記録を更新する、という循環を示した説明図
図:記録を読み、現場へ返す流れ(Akatsuki編集部作成)図を拡大して見る

図の内容:4つの枠が円を描くように矢印でつながっています。「担当者が記録を入れる」から「週の打ち合わせで一緒に読む」へ、そこから「次の行動として返す」へ、さらに「担当者が進めて更新する」へと進み、最初の枠に戻ります。打ち合わせの枠の横には、読むものとして「期限を過ぎた次の行動」「次の行動が空欄の案件」「区分の確認待ち」の3つが書かれています。下の注記に、打ち合わせでは担当者を責めず、案件ごとに次の行動を1つ決めること、読まれていない項目は減らす候補にすることが書かれています。

週の打ち合わせで読むもの

【編集部の提案】週に一度、15分ほどの時間を決め、営業の責任者と担当者が一緒に記録を見ます。全部の案件を順に読むのではなく、次の3つに絞ります。

  • 期限を過ぎた次の行動がある案件
  • 次の行動が空欄の案件
  • 区分の確認待ちになっている連絡

この3つは、どれも記録を見ないと気づけない案件です。打ち合わせでは、案件ごとに次の行動を1つ決め、その場で記録に書きます。書くのは担当者本人でも、責任者でもかまいませんが、誰が書いたかは残します。

責任者が記録を使って判断する

記録を読む場で大事なのは、記録をもとに、責任者が実際に判断することです。例えば「この案件は保留にして、次は来月の15日に確かめる」「この見積もりは期限を過ぎているので、明日の午前中に電話する」のように、記録を見たからこそ決められたことを、その場で担当者に返します。記録が判断に使われるのを見ると、担当者にとって記録は自分の仕事を助ける道具になります。

読まれていない項目を見つける

【編集部の提案】週の打ち合わせを数回続けると、一度も話題に出ない項目が見えてきます。その項目は、目的と使う人の欄を見直し、使われていなければ減らす候補にします。項目を減らせば、一件の記録にかかる手間はその分だけ軽くなります。減らした項目と日付は、運用の決まりの記録に書いておきます。

項目を減らすときの手順

【編集部の提案】項目を減らす判断は、思いつきで消さず、次の順番で進めます。消した後に「やはり要った」と分かったときに、戻せるようにするためです。

項目の棚卸しの表(編集部の提案)
欄書くこと
項目の名前今の記録にある項目を、1行に1つ
書いた目的その項目を作ったときの目的。分からなければ「不明」と書く
使う人実際にその項目を見て判断している人
打ち合わせで使われたか直近の週の打ち合わせで、その項目を見て何かを決めたか
埋まっている記録空欄でも「未確認」でもなく、中身が書かれている記録があるか
判断残す・任意にする・減らす候補のどれか

棚卸しは、営業の責任者と担当者が一緒に行います。責任者だけで決めると、担当者が自分の手元のメモの代わりに使っている項目を消してしまうことがあり、担当者だけで決めると、責任者が月に一度の振り返りで使う項目が消えることがあります。

減らす候補になった項目は、すぐには消さず、まず入力の画面から外すか、表計算のシートなら列を右端へ移して「入力しない」と見出しに書きます。過去の記録の中身は消しません。その状態で次の試行の期間を過ごし、週の打ち合わせで「あの項目がなくて困った」という場面が出なければ、減らすと決めます。困った場面が出た場合は、その場面を書き、項目を戻すか、自由に書ける欄に書けば足りるかを決めます。

減らすかどうかを決めるのは、項目の数を増やすときと同じく営業の責任者です。決めた日、減らした項目、戻すときの条件を運用の決まりの記録に1行で書き、担当者にも同じ日に伝えます。ほかの部署が同じ記録を見ている場合は、その部署の担当者にも、減らす前に確かめます。営業の打ち合わせでは話題に出なくても、請求や保守の担当が使っている項目があるかもしれないためです。

例外の扱い:個人のお客様・共有のメール・同じ名字ほか

決めた項目と区分では扱いにくい場面があります。次の例外は、起きる前に扱いを決めておくと、担当者が迷って入力を止めることが減ります。

例外の場面と扱い(編集部の提案)
場面起こりうること扱いの例
個人のお客様会社名の欄が埋まらない相手の欄に「個人」と書く区分を作り、営業の判断に要らない個人の情報は書かない
共有のメールの宛先代表のアドレスから、違う人が連絡してくるメールアドレスだけで同じ人とみなさず、名前と用件で人が確かめる
同じ名字・同じ名前別の人の記録がまとめられる名前だけでまとめず、会社・部署・連絡先・用件を合わせて確かめる
相手の部署の異動同じ人が別の部署から連絡してくる同じ人の記録に異動を書き足し、用件が違えば別の案件にする
同じ会社の複数の商談1つの案件に複数の用件が混ざる用件ごとに案件を分け、同じ会社の別の案件があることを書く
相手の退職連絡先が使えなくなる記録は消さず、連絡先が使えないことと、後任の方の確認を次の行動にする
ツールの停止CRMが使えない時間がある決めた表計算のシートに一時的に書き、復旧後に移して「移した」と印を付ける

共有のメールと同じ名字は、まとめる前に確かめる

【編集部の提案】代表のアドレスや部署で共有しているアドレスからの連絡は、送ってきた人が毎回同じとは限りません。前に紹介したように、ツールの重複の仕組みがメールアドレスを手がかりにしている場合、共有のアドレスを使う別の人が、同じ人としてまとめられることがあります。共有のアドレスからの連絡は、名前と用件を見て、人が確かめてから記録します。同じ名字や同じ名前の人も同様で、名前だけでまとめません。

担当者の退職

営業の担当者が退職するときは、前の節の担当の交代と同じ手順で、退職の日より前に引き継ぎを終えます。退職した担当者の名前が担当の欄に残ったままの案件がないかを、退職の日に営業の責任者が確かめます。退職した人のアカウントの扱いや記録の保存は、社内で情報の管理を受け持つ責任者に確かめてください。

ツールが止まったときの仮の記録と、復旧した後の照合

【編集部の提案】CRMが使えない時間の記録は、その場の思いつきで紙やメモに分散させず、仮の記録の置き場所を前もって1つ決めておきます。置き場所は、営業の全員が開ける表計算のシートなどにし、見られる人の範囲は、元の記録と同じになるように社内の責任者に確かめておきます。

仮の記録の欄(編集部の提案)
欄書くこと
仮の番号仮の記録の中だけで使う番号
書いた日時と書いた人いつ、誰が書いたか
相手と案件分かれば元の記録の案件の番号も書く。分からなければ「未確認」
出来事と内容商談・電話・送付・返事のどれかと、決まったこと
状態・次の行動・期限最小の項目のうち、この出来事で変わったもの
移した日時と移した人復旧した後に元の記録へ移したときに書く

復旧した後の照合は、次の順番で行います。

  1. 仮の記録の行の数と、元の記録へ移した行の数を数え、同じかを確かめる
  2. 停止の間に、元の記録の側でも同じ案件が更新されていないかを見る。スマートフォンなど別の画面から更新できていた場合、同じ出来事が両方に書かれていることがある
  3. 両方に書かれていた出来事は、1つにまとめ、どちらを残したかを書く。内容が食い違うときは、書いた担当者に確かめる
  4. 案件の番号が「未確認」の行は、相手と用件を見て、既存の案件への追加・重複・別の案件のどれかを、ふだんと同じ区分で決めてから移す
  5. すべての行に移した日時と移した人が書かれたら、仮の記録を閉じ、閉じた日時を運用の決まりの記録に書く

照合を受け持つ人は、停止の前に決めておきます。ふだんの記録の期限(例えば翌営業日の正午)は、停止の時間の分だけ遅れることがあります。停止の時間中の出来事を入力の割合で数えるときは、仮の記録に期限内に書いたものを期限内として扱うか、停止の時間を分母から外すかを、数える前に決めておきます。後から都合のよいほうを選ばないためです。

入力の割合の数え方:分母を決め、案件の完了と分ける

入力が進んだかどうかを確かめるには、数え方を先に決めます。「入力率」という言葉は、分母を決めないと、人によって違う数を指してしまいます。

分母を「記録が必要な出来事」にする

【編集部の提案】この記事では、入力の割合を次のように数えます。

  • 分母:決めた期間に起きた、記録が必要な出来事の数。出来事は、商談・訪問、電話やオンラインの打ち合わせ、見積もりや提案の送付、先方からの返事のように、種類を先に決めておく
  • 分子:分母の出来事のうち、決めた期限(例えば、翌営業日の正午まで)までに、最小の項目がそろった記録の数。分からない項目に「未確認」と書いてあるものは、そろったものに数える

案件の数を分母にすると、1つの案件で何回も打ち合わせがあった場合と、1回だけの場合が同じ重さになります。出来事を分母にすると、記録が必要だった場面に対して、どれだけ記録が作られたかが分かります。

出来事の数は、担当者の予定表や、送信済みのメールの控えなどから数えます。記録が作られなかった出来事は、CRMの中だけを見ても見つからないためです。

1回の打ち合わせで、複数の案件を扱ったとき

【編集部の提案】同じ会社を訪ねた1回の打ち合わせで、別の部署の別の用件も一緒に話すことがあります。この場合は、案件ごとに1つの出来事として数え、それぞれの案件に記録を作ります。1つの記録に2つの用件をまとめて書くと、片方の案件の次の行動が、もう片方の記録の中に埋もれてしまうためです。反対に、同じ案件について同じ日に電話を2回かけた場合は、決まったことが1つにまとまるなら1つの出来事として数えてかまいません。どちらにするかは、数える前に決め、試行の間は変えません。

期限の後に入った記録を分けて数える

【編集部の提案】期限の後に入った記録は、期限内の記録とは別に数えます。「期限内」「期限の後」「記録なし」の3つに分けると、入力が遅れているのか、まったく入っていないのかが分かります。遅れているなら入力の時間や場所の問題、入っていないなら記録が必要だと気づかれていない場面の問題、というように、直す場所が変わります。

入力の割合と、案件の完了を分ける

入力の割合が高くても、案件が前に進んでいるとは限りません。反対に、案件が受注や辞退で終わっていても、その途中の記録が抜けていることがあります。入力の割合は記録の運用の数で、案件の完了は営業の成果の数です。2つを同じ表の同じ列にまとめず、別々に書きます。

架空の6案件の台帳で数える

ここからは、架空の会社を例に、2週間の記録を数えます。この会社は、事務所向けの業務の機器の保守を扱っていて、営業の担当は2人(担当Aと担当B)、営業の責任者が1人です。10月19日(月)から10月30日(金)までの2週間、最小の6項目と「未確認」の書き方を決めた新しい運用を試しました。記録の期限は、出来事の翌営業日の正午としました。次の表は、11月2日(月)10時の時点の台帳です。

架空の会社の案件と出来事の台帳(11月2日(月)10時の時点、仮の値)
番号相手と区分期間中の出来事記録の状況状態・次の行動担当
C-01架空の会社X(新規)10月19日(月)初めての商談、10月22日(木)見積もりの送付2件とも期限内進行中。10月29日(木)に社内で記録を点検した。次は11月5日(木)に見積もりの回答を尋ねる担当A
C-02架空の会社Y(既存の案件への追加)10月20日(火)電話10月22日(木)に入力(期限の後)進行中。11月4日(水)に追加の見積もりを送る担当B
C-03架空の会社X(重複の問い合わせ:C-01と同じ用件)10月21日(水)別の窓口からの問い合わせ期限内(C-01へまとめた)まとめて完了。C-01に統合担当A
C-04架空の会社X(別の案件:別の部署の別の用件)10月23日(金)電話、10月27日(火)商談電話は期限内、商談は記録なし進行中。次の行動が空欄担当B
C-05個人のお客様(新規)10月20日(火)商談、10月28日(水)電話2件とも期限内次の日付が未定。11月16日(月)に日程を尋ねる担当A
C-06架空の会社Z(新規)10月22日(木)商談、10月26日(月)辞退の返事2件とも期限内辞退。連絡しない(10月26日(月)15時に停止)担当B

この例で「出来事」に数えたもの

この会社では、試行の前に、記録が必要な出来事を次のように決めていました。

  • 数える:初めての商談・訪問、電話やオンラインの打ち合わせ、見積もりや提案の送付、先方からの問い合わせ、先方からの返事(辞退を含む)
  • 数えない:社内の打ち合わせ、自動の返信、日程の候補をやり取りするだけのメール

日程の調整だけのやり取りを数えないのは、その結果は、日程が決まった後の商談の記録や、次の行動の欄の書き換えに含まれるためです。数えない出来事でも、記録してはいけないわけではありません。分母に入れないだけです。

数える出来事を決めたら、試行の途中で増やしたり減らしたりしません。途中で変えると、前半と後半で分母の中身が変わり、数を並べられなくなるためです。

出来事の一覧の作り方と、遅れと未記録の見つけ方

この会社では、試行の間は出来事の一覧を毎日は作らず、11月2日(月)の朝に、営業の責任者が2人の担当者の予定表と送信済みのメール、受けた問い合わせの控えから、2週間分の出来事をまとめて書き出しました。CRMの中だけを見ても、記録されなかった出来事は見つからないためです。

書き出した出来事ごとに、出来事の日、記録の期限、記録が入った日時の3つを並べ、期限内・期限の後・記録なしのどれかを付けました。

  • C-02の10月20日(火)の電話:期限は翌営業日の10月21日(水)の正午で、記録は10月22日(木)に入ったため、期限の後としました。記録の中身は最小の項目がそろっていたため、記録なしとは分けて数えます
  • C-04の10月27日(火)の商談:期限は10月28日(水)の正午でしたが、11月2日(月)の朝の時点で記録がなく、記録なしとしました。予定表には商談が入っていたため、出来事として分母に入っています

C-04は、記録がないために次の行動も書かれておらず、週の打ち合わせで見つかるまで、誰も次の連絡を予定していない状態でした。記録なしの1件は、入力の割合を1件分下げただけでなく、進行中の案件が止まる原因にもなっていたことになります。

出来事の一覧を毎日作れば、C-04の記録なしは10月28日(水)の正午の後に気づけた可能性があります。ただ、2回目の試行で変えることは1つと決めたため、この会社では、一覧を毎日作ることは次に試す候補として運用の決まりの記録に書くだけにしました。

出来事ごとに数える

この2週間の記録が必要な出来事は、C-01が2件、C-02が1件、C-03が1件、C-04が2件、C-05が2件、C-06が2件で、2+1+1+2+2+2=10件です。

  • 期限内に最小の項目がそろった記録:C-01の2件、C-03の1件、C-04の1件、C-05の2件、C-06の2件で、2+1+1+2+2=8件
  • 期限の後に入った記録:C-02の1件
  • 記録なし:C-04の10月27日(火)の商談の1件

8+1+1=10件で、分母の10件と合います。期限内の記録は10件のうち8件です。割合にすると8÷10で8割ですが、10件という件数では、1件の違いで1割動きます。この記事の手順では、この割合だけで運用の良し悪しを決めません。

案件の状態は別に数える

案件の数で見ると、6件のうち、C-03はC-01にまとめて完了、C-06は辞退で、終わった案件は2件です。進行中は4件(C-01、C-02、C-04、C-05)で、このうち次の行動の日付が書いてあるのは、C-01・C-02・C-05の3件です。C-04は、商談の記録がないため、次の行動も空欄になっています。

期限内の記録が10件のうち8件あっても、進行中の4件のうち1件は次の行動が分からない状態です。入力の割合と、案件が前に進める状態にあるかは、別の数として見る必要があることが、この例から分かります。

例外の扱いを確かめる

  • C-03:C-01と同じ会社の別の人から、同じ用件の問い合わせが別の窓口に届きました。新しい案件にせず、C-01にまとめ、届いた日時と窓口を残しました
  • C-04:同じ会社Xでも、別の部署から別の用件だったため、C-01とは別の案件にしました。同じ会社の別の案件があることを、両方の記録に書きました
  • C-05:個人のお客様のため、会社名の欄には「個人」と書き、営業の判断に要らない情報は書きませんでした
  • C-06:辞退の返事を受けて連絡を止め、止めた日時を状態の欄に書きました。配信の一覧にも加えていません

入力の負荷と、営業の進み方を両方から見る

入力の割合だけを見て運用を変えると、記録は増えたのに、担当者が商談の準備に使う時間が減った、ということが起こりえます。入力の負荷と、営業の進み方を、両方から見ます。

入力の負荷を見る

【編集部の提案】入力の負荷は、担当者に一日の終わりに短く書いてもらいます。書くのは、その日に記録に使ったおおよその時間と、手が止まった項目の2つです。正確な計測でなくてかまいません。手が止まった項目が同じものに偏っていれば、その項目の書き方や必要性を見直します。

一日の終わりに書く負荷の申告(編集部の提案)
欄書くこと
日付と名前申告した日と担当者
記録に使ったおおよその時間「数分」「10分ほど」のような大まかな書き方でよい
手が止まった項目項目の名前。なければ「なし」
止まった理由書き方が分からない、相手に聞いていない、など
記録を後回しにした出来事あれば、出来事の種類と、後回しにした理由

申告は、担当者の仕事ぶりを比べるために使いません。比べる目的で使うと、申告が実際より短く書かれ、負荷の見直しに使えなくなるためです。申告を読むのは営業の責任者だけにし、週の打ち合わせでは、項目や書き方の見直しの材料としてだけ取り上げます。

架空の会社では、2週間の終わりに、担当Aは「1件の記録におおむね数分」「止まった項目はなし」、担当Bは「商談の後の記録に10分ほどかかることがあった」「次の行動の書き方で迷った」と書きました。これは本人の申告の仮の値で、計測した時間ではありません。

営業の進み方を見る

【編集部の提案】営業の進み方は、入力の割合とは別に、次の2つで見ます。

  • 進行中の案件のうち、次の行動の日付が書いてある件数
  • 期限を過ぎた次の行動の件数

架空の会社では、11月2日(月)の時点で、進行中の4件のうち次の行動の日付があるのは3件、期限を過ぎた次の行動は0件でした。次の行動が空欄のC-04は、週の打ち合わせで担当Bと責任者が商談の内容を確かめ、その場で記録を作ると決めました。

少ない件数で、原因を決めつけない

2週間で10件の出来事、6件の案件という件数では、前の運用と比べて記録が増えたか減ったかを言える材料になりません。この会社では、前の2週間は出来事の数を数えていなかったため、前後の比較もできません。たとえ前の数があったとしても、その間に商談の数や時期が変われば、記録の数も変わります。この記事の手順では、少ない件数の比較で「新しい運用のおかげで入力が増えた」とは決めません。確かめられるのは、決めた運用が実際に回ったか、負荷が担当者の仕事を圧迫していないか、です。

2週間の小さな試行と、判断の条件

運用を全社で一度に変えると、うまくいかなかったときに戻すのが大変です。最初は、担当者の一部と、期間を決めて試します。

試す範囲と期間を決める

【編集部の提案】試行の前に、次のことを書いておきます。

  • 試す人:担当者のうち1〜2人
  • 試す期間:2週間(曜日の並びがそろうよう、月曜日から翌週の金曜日まで)
  • 変えること:最小の項目、「未確認」の書き方、記録の期限、週の打ち合わせ
  • 変えないこと:顧客への連絡の仕方、見積もりの出し方、試行に入らない担当者の運用
  • 判断の日:試行が終わった後の最初の営業日

変えることを複数にする場合は、それらを一つの「運用のまとまり」として試していることを書きます。後から、どの変更が効いたかを分けて評価することはできないためです。

判断の条件を、試す前に決める

【編集部の提案】判断の条件は、結果を見る前に決めます。結果を見てから条件を決めると、都合のよい数字に合わせた条件になりやすいためです。架空の会社では、試行の前に次の条件を決めていました。この条件は、この会社が決めた仮の基準で、一般的な目安ではありません。

試行の後の3つの判断(架空の会社が決めた仮の条件)
判断条件次にすること
続ける期限内の記録がおおむねそろい、担当者が挙げた負担の項目が少なく、期限を過ぎた次の行動が増えていない同じ運用でもう2週間続け、試す人を1人足すかを決める
直す記録が入らない場面や、手が止まる項目が特定できた直すことを1つに絞り、修正票に書いて、もう2週間試す
戻す記録に使う時間が商談の準備を圧迫している、または期限を過ぎた次の行動が増えた前の運用に戻し、戻した日と理由を書く

架空の会社の判断は「直す」でした。記録なしの1件が、移動の多い日の商談の後だったことと、担当Bが次の行動の書き方で迷ったことが分かったためです。直すことは「次の行動の欄に、書き方の例を3つ表示する」の1つに絞り、11月2日(月)から11月13日(金)までの2週間でもう一度試すと決めました。

失敗したときの戻し方

【編集部の提案】戻すと判断したときに備えて、試行の前に、前の運用の項目と決まりを記録に残しておきます。試行の間に作った記録は消さず、前の項目に書き写せるものは書き写します。新しい項目にしかない情報は、自由に書ける欄に移します。戻した日と理由、次に試すとしたら何を変えるかを、運用の決まりの記録に書きます。

戻すことは失敗ではありません。決めた条件で判断したという記録が残れば、次に試すときの材料になります。

CRMの記録の運用で、次に直す1つを一緒に絞りたいとき

Akatsukiのマーケティング相談では、広告・ホームページ・Googleマップ・SNS・AI活用の悩みを伺い、止まっている場所、次に試すことと理由、確かめる数字を一緒に整理します。

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登録なしで使えるCRM運用20項目点検表

ここまでの内容を、20項目の点検表にまとめます。登録や入力の送信は要りません。印刷するか、表計算のシートに写して使ってください。当てはまらない番号は、次の節の修正票に書き出します。

CRM運用20項目点検表
番号確かめること確かめ方当てはまらないときの次の一手
1記録が生まれる場面を書き出し、止まる場面が分かっている担当者の一日の予定表と記録を並べる一人の一日を追って書き出す
2入力されない理由を、人ではなく仕組みの言葉で書いている観察の記録を読む場面と原因の言葉に書き直す
3最小の項目ごとに、目的と使う人が書いてある項目の一覧を見る書けない項目を最小の項目から外す
4任意の項目は、使う場面が決まってから足している任意の項目の一覧を見る使い道のない項目を外す
5分からないことを「未確認」と書け、推測と事実を分けている記録を5件見る「未確認」の書き方を決める
6誰がどの記録を見られるか、記録をどう残すかを、社内の責任者に確かめた確かめた日と相手の控えを見る責任者に確かめる
7CRMの記録を、アクセス解析などの計測へ送っていない計測の設定を担当者に確かめる送っている設定を止める
8新しい連絡を、既存の案件・重複・別の案件のどれかに分けている直近の新しい連絡の記録を見る3つの区分を決め、迷うものは確認待ちにする
9重複をまとめるとき、元の連絡を消さずに残しているまとめた案件の記録を見るまとめた先と元の日時を書く
10ツールの段階の名前と、社内の状態の言葉の対応の表がある対応の表を見る表を作って共有する
11保留・辞退・追客の希望なし・次の日付が未定の書き方が決まっている止まった案件の記録を見る状態ごとに書くことを決める
12どの案件にも、次の行動の欄が空欄のまま残っていない次の行動の欄で絞り込む空欄の案件に次の行動を書く
13辞退と追客の希望なしの案件に、連絡していない状態の欄と連絡の記録を見る連絡を止め、止めた日時を書く
14担当の交代のときに、4つのことを一緒に確かめている直近の交代の記録を見る交代の日に一緒に一覧を見る
15週に一度、記録を読む場があり、案件ごとに次の行動を決めている打ち合わせの記録を見る15分の時間を予定表に入れる
16読まれていない項目を見つけ、減らす候補にしている打ち合わせで話題に出た項目を数える一度も出ない項目を見直す
17例外(個人のお客様・共有のメール・同じ名字・異動・複数の商談・退職・ツールの停止)の扱いが決まっている決まりの記録を見る起きる前に扱いを書く
18入力の割合の分母(出来事の種類)と期限が決まり、期限内・期限の後・記録なしを分けて数えている数え方の記録を見る分母と期限を書き、3つに分ける
19入力の割合と案件の完了を別々に見て、入力の負荷と営業の進み方も記録している集計の表を見る列を分け、負荷と進み方の欄を足す
20試行の範囲・期間・判断の条件・戻し方を、試す前に書いている試行の計画の記録を見る結果を見る前に条件を書く

点検表の使い方

【編集部の提案】最初は、営業の責任者と担当者の1人で、1から20まで一通り確かめます。3・5・12・15が当てはまらない場合は、ほかの番号より先に直します。項目が多すぎる、分からないことを書けない、次の行動が空欄、記録が読まれない、のどれかが残っていると、ほかを直しても入力が進みにくいためです。6と7は、運用を変える前に確かめます。試行の後の判断では、18・19・20を中心に確かめます。

空欄の修正票:直すことを一つずつ書く

点検表で当てはまらなかった番号は、修正票に1つずつ書き出します。修正票は、直すことと、直ったと言える条件を、担当と期限つきで残すためのものです。次の表は、そのまま写して使える空欄の修正票です。

空欄の修正票(編集部の提案)
欄書くこと記入欄
点検表の番号当てはまらなかった番号(1つの修正票に1つ)(記入)
当てはまらなかった内容何が、どうなっていたか(記入)
直す場所場面・項目・区分・状態・読む場・数え方のどれか(記入)
直すこと1つだけ(記入)
担当・期限直す人1人と、日付(記入)
完了の条件確かめれば誰でも同じ結論になる条件(記入)
確かめる日試行の終わりか、別に決めた日(記入)
戻し方うまくいかなかったときに、何をどこへ戻すか(記入)
結果完了・未完了と、確かめた日時(記入)

記入の例(架空の会社、仮の値)

架空の会社が、試行の後に書いた修正票の例です。

修正票の記入の例(架空、仮の値)
欄記入の例
点検表の番号12
当てはまらなかった内容10月27日(火)の商談の記録がなく、C-04の次の行動が空欄だった
直す場所項目(次の行動の書き方)
直すこと次の行動の欄に、書き方の例を3つ表示する
担当・期限営業の責任者・11月2日(月)
完了の条件次の行動の欄を開くと、書き方の例が3つ表示される
確かめる日11月13日(金)の2回目の試行の終わり
戻し方例の表示で入力に時間がかかるようなら、表示を消して元の欄に戻す
結果未完了(11月13日(金)に確かめる)

修正票の書き方の注意

【編集部の提案】修正票には、直すことを1つだけ書きます。「入力を徹底する」のように範囲の広い書き方や、人に向けた注意の書き方は避けます。何をどう変えたら終わりかが決まらないためです。完了の条件と戻し方は、直す前に書きます。修正票を完了にしたら、点検表の同じ番号も、同じ日に確かめ直します。

よくある質問

入力しない担当者を、評価に反映させるべきですか

この記事では、評価の仕組みは扱いません。この記事の手順は、入力されない場面を仕組みの側から見直すことを先にしています。記録が読まれ、判断に使われる運用になっていないうちに、入力の量だけを評価に結び付けると、推測で項目を埋めた記録が増え、記録の中身が確かめにくくなるおそれがあります。

項目を減らすと、後で必要な情報が足りなくなりませんか

減らすのは、目的と使う人を書けない項目や、読む場で一度も使われていない項目です。後で必要になった場合は、その時点で使う場面を書き、任意の項目として足します。減らした項目と日付を記録しておけば、いつから情報がないかも分かります。

表計算のシートから、CRMへ移すべきですか

この記事では、どちらがよいかを決めていません。項目・区分・状態・読む場の決まりは、表計算のシートでもCRMでも同じように使えます。移す場合は、移す日を決め、その日の時点で進行中の案件を、次の行動と期限ごと移し、一定の期間は両方の件数が合うかを確かめます。

まとめ:記録を、次の行動に使われる形で残す

  • 「入力されない」を、記録が生まれる場面ごとに観察し、仕組みの言葉で書く
  • 残す項目を最小にし、項目ごとに目的と使う人を書く。分からないことは「未確認」と書き、推測と分ける
  • 新しい連絡を、既存の案件への追加・重複・別の案件に分け、人が確かめてから記録する
  • 保留・辞退・追客の希望なし・次の日付が未定の書き方を決め、次の行動の欄を空欄にしない。辞退と希望なしには連絡しない
  • 記録を読む場を週に一度決め、読んだ結果を担当者の次の行動として返す。読まれない項目は減らす
  • 入力の割合は出来事を分母に数え、案件の完了と分ける。入力の負荷と営業の進み方も一緒に見る
  • 2週間の小さな試行で、決めた条件に沿って続ける・直す・戻すを決め、少ない件数で原因を決めつけない

CRMの記録の目的は、入力の割合を上げることではなく、誰が見ても次に何をすればよいかが分かる状態を作ることです。今日できることは、担当者一人の今日の予定表と記録を並べ、記録が作られなかった場面を一つ見つけることです。

今日やること

  1. 担当者一人の今日の予定表と、その日に作られた記録を並べ、記録が作られなかった場面を一つ書き出す
  2. 今の記録の項目の一覧に、項目ごとの目的と使う人の欄を足し、書けない項目を最小の項目から外す候補にする
  3. 週に一度15分、期限を過ぎた次の行動・次の行動が空欄の案件・区分の確認待ちの3つを一緒に読む時間を予定表に入れる

出典・編集方針

  • この記事の手順、記録が生まれる場面の観察、最小の項目と目的・使う人、任意の項目と「未確認」の書き方、新しい連絡の3つの区分、止まった案件の書き方、担当の交代の確認、記録を読む場、例外の扱い、出来事を分母にした入力の割合の数え方、入力の負荷と営業の進み方の見方、2週間の試行と判断の条件・戻し方、20項目の点検表、修正票は、Akatsuki編集部の実務提案です。特定の会社で効果を測った結果ではなく、入力の割合や商談の件数が上がることを約束するものではありません。
  • 事務所向けの業務の機器の保守を扱う会社の台帳(C-01〜C-06)、架空の会社X・Y・Z、担当A・担当B、記録にかかった時間の申告、判断の条件、修正票の記入の例、本文の日付・時刻・件数は、説明のために作った架空の例と仮の値です。実在の会社の数字や事例ではなく、業種の平均的な数字や目安でもありません。
  • 冒頭の写真風の画像は生成AIで作成したイメージで、実在の会社や実際の画面ではありません。本文中の図版3点は、Akatsuki編集部が文字と図形で作成した説明図です。
  • CRMの製品の選び方・料金・設定の手順、入力の割合の一般的な水準、評価の仕組み、個人情報や権限の扱いが法令に合っているかの判断は扱っていません。本文の「出典1」などの番号は下の一次情報の番号に対応し、内容は確認日の時点のものです。提供元のヘルプや解説は更新されることがあり、実際に設定するときは、その時点の案内と自社の画面を確かめてください。この記事は、実際の会社のCRMの記録を点検したものではありません。

一次情報(外部サイト)

記事の作り方と訂正の方針は編集方針にまとめています。

執筆

Akatsuki編集部 株式会社Akatsukiの編集担当です。店舗集客、広告・Web改善、AI活用について、判断に役立つ考え方と確認項目を届けます。

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20項目の点検表と修正票で確かめても、項目・区分・状態・記録を読む場・数え方のどこから直すかを決めきれない点が残った場合は、点検表の結果や台帳の件数(相手の名前や連絡先、商談の内容などの個人情報は除いてください)をお知らせください。次に確かめることを一緒に整理します。